怖い絵1 怖い絵2

怖い絵怖い絵
中野京子

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怖い絵2怖い絵2
中野京子

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いろんな意味で「怖い絵」の本である。
単純に見た目にグロテスクな絵で「怖い絵」だったり、周到に埋め込まれたシンボルに画家の怖ろしい意図を読み取ったり。
もしくはその絵の背景にある歴史の闇だったりと。
いや、すべての絵に、ある種の「怖さ」を見出すことは可能だろう。なにしろ「絵」が人の深奥の感情や意図の吐露なのだからして。ある意味、本当に怖ろしいのは「人の心」ですという陳腐な結論となりそうだし。

また、西洋絵画の背景は稠密にその怖ろしい歴史と社会に結びついているのだから・
どちらかというと、この本で説明されるのは背景の歴史と結びつけての「怖さ」である。華麗な宮廷を闊歩する王侯貴族たちのイメージに彩られたヨーロッパ史がいかに野蛮で暴力に満ちたものであったかを語り、画家たちがその妖怪のような特権階級からの意向を受け絵筆をとったかということを活写する。
その血まみれの歴史を思う時、美しい名画とはそんな歴史の血を吸って咲く妖花と言えるかもしれない。

いささかゴシップに似た俗な話しや苦しいこじつけに堕してしまう点はある。
しかし絵を見る時にこういう見方もあると蘊蓄がらみで教えてもらうのはありがたい。
3もきっと出るんだろうな。楽しみ。・