華氏911

まいったな。感想がとても書きにくい映画だ。

映画としてこの作品をみれば、非常に面白い。映像を編集して観客を引き込むお手本みたいな作品だ。カットインされる映像。音楽の使い方も非常に巧み。いや、編集が巧みすぎるのだ。扱っているコトがコトだけに。ジョークを合間にはさみつつも、非常にシリアス。

スラム化する郊外。限りなく開いていく貧富の差。そして、希望のない層が戦場へと送り込まれる。ネオコンのため、石油利権のため。「ふざけんなよ!」という怒り。

映画で言われている内容の多くは知っていたことだが、それをいっきょに並べられ映像化されることにはインパクトがある。
それは一種の飛び道具だ。

暗い劇場の中、じっと見つめるスクリーン。心の掛けがねを落とそうとしても、息子を無為に失った母親の苦痛と怒りとがダイレクトに心を灼く。そう、何のために?

イラクの路上に横たわる血だらけのむごたらしい犠牲者達。目を背けてはいけない。歯をくいしばって見るしか出来ないのだから。
なんて素晴らしい世界…。