孟嘗君 4巻 5巻

孟嘗君 (4)
宮城谷 昌光
孟嘗君 (5)
宮城谷 昌光

孟嘗君」読了。
4巻は青年時代。運命の女性洛芭(らくは)との恋と、そして両者の翻弄される運命を描き、5巻では名宰相として世に認められるところから、また「鶏鳴狗盗」の故事や清少納言の歌で有名な函谷関の逸話も含めて、薛(せつ)という小国にユートピアを打ち立てるまでを描く。

いかなる大国も、田文がいるかぎり、その小国に手をだせなかった。

という一文とともに、小説「孟嘗君」は終わる。
そして、そのユートピアの行く末は、「奇貨おくべし」に譲ることになる。
血風吹きすさぶ戦国時代をその「孟嘗君」ひとりの「徳」のみで築かれた小国は、その希有な人が世を去ると同時に崩壊の運命を避けられない。
ユートピアの儚さを知りつつ、なお語る

人のいのちは、すでにあるものを守っていくというものではない。日々つくってゆくものだ。今日つくったいのちも明日にはこわれる。それゆえ、いのちは日々産み出すものであろう。

という文の台詞は重い。