太公望 上 中 下

太公望〈上〉
宮城谷 昌光

太公望〈中〉
宮城谷 昌光

太公望〈下〉
宮城谷 昌光

封神演義」で有名な呂望こと「太公望」の物語である。滅ぼされた遊牧民の子が大国「商」を倒すまで。謎と伝説とフィクションに彩られた世界を手慣れた歴史物語として編み直す。
上、中までは非常に面白い。遊牧の民をさすらい、父の遺言どおり伝説の遊牧民の平和な村に行きながら、それに満足せず復讐のために周王朝打倒を画策するまでは…。
途中から望がスーパーマンすぎて、すべての人が彼の聡明さにひれ伏すような感じが、ちょっとなあ…。実際に文王に出会ってからの彼の「商」打倒の方策が見えにくいのが食い足りない。そこらへんは現代的にまで戦略を重視する「カエサル評伝」をいっしょに読んでしまったせいで、感じるのかもしれないが…。
それにしも「炮烙の刑」をはじめとする古代中国の刑罰の怖ろしさったらない。煮たり、干し肉にしたり。実父に羮にして喰わせたり。実際にあったかどうかは別にしてその想像力たるや…。「酸鼻を極める」という表現も、血の匂いで鼻が酸っぱくなるということらしいので。まあ、病的にまで文明が先鋭化していたと考えられなくもないのだが。