オペラ座の怪人

おりしも深い霧に覆われる陰鬱な福岡の街。バックグラウンドの効果もばっちりに、映画「オペラ座の怪人」を見てきました。
もうパーフェクトな出来に、最高だぜ、状態。映画がはねたその後も、iPodに詰め込んだロンドンオリジナルキャストによるミュージカルCDを聞きながら、霧にかすむ不思議な風景の街を彷徨。映画の余韻を十二分に楽しむことができたのはラッキー。
豪奢で、奇矯で、悪趣味で、ダークなミュージカルの世界そのままに、アンドリュー・ロイド・ウェーバーの全ナンバーが繰り広げる、愛と官能の惨劇。奈落の底にいる化け物の狂気と等しき純愛の物語。
それにしても、演劇の舞台下を日本では「奈落」というが、まさしくその言葉に相応しいオペラ座の地下洞窟。洋の東西を問わず、「演劇」の強烈なスポットライトの華やかな世界のその光が強ければ強いほど、その足下には深い暗黒が拡がることを人々は見ていたのかもしれない。なにしろパリのオペラ座は、彫刻と装飾だらけで、魑魅魍魎が蠢いていても決して不思議ではない。映画はそのパリオペラ座をCGもセットもほぼ満足のいくレベルで再現している。ロイド・ウェーバーが口とお金を出したそうなのでここらへんは当然かも。
CGの魔術で、白黒のオークション会場が、思い出とともに華やかさを取り戻し、ぼろぼろになったオペラ座がその輝きを取り戻すところなんざ、あざといばかり。予告編でさんざ見たけれどやっぱり息を呑んでしまう。
無数の蝋燭で彩られた暗い地下水道も勿論素晴らしいし。だが圧巻の仮面舞踏会シーン。白と黒と金。華やかでありながら、モノトーンで統一された美しい画面に、突如緋色のマントで現れるファントムが、まるで血の一滴のしたたりのように見えて不気味で華麗だ。舞台を見ながら自らの想像力で描いた世界が、スクリーンに映し出される、といった感じ。
それにしても、クリスティーヌ役のエミー・ロッサム美しいなあ…。薄倖そうな、魔に魅入られそうな、儚げな風情がクリスティーヌそのもの。そりゃ、ロンドンオリジナルキャストのCDに比較すれば歌唱力が足りないのは如何ともし難いが(これは比較の対象の問題で、彼女は十分歌が上手い。)もう、あの黒目がちな瞳に涙を溢れさせるだけでビジュアル的に「死美人」by涙香を体現しているので十分!なんでPJはアルウェンを彼女にしなかったんだー。悪の隆盛によりその命を縮める夕星(ゆうづつ)の君に相応しいのにー。←彼女はまだ17歳なので無理。これから指輪を見るときには、彼女に脳内変換して見ることにしよ。
あーところで、このスペクタクルにとんでもない水を差しているのが戸田奈津子センセの字幕。「ロード・オブ・ザ・リング」の悪夢再び。「情熱のプレイ」はないだろ(泣)映画館で思わず椅子から落ちそうになったぞ。
見てて釈然としなかった向きはこちらを参考にされるといいかも。相変わらず映画をぶち壊すパワフルな言葉の使い方に暗然。
オペラ座の怪人」の字幕 珍訳集
http://uk.geocities.com/jonetsuplay/index.html#yaku