宇宙戦争

いや、もう最高の怪獣映画でした。怪獣だー、怪獣だー。
コワイぞートライポッド!我々人類ではどうしようもなく侵略の意図をもってやってきたコミュケーション不能の慈悲なき奴ら、それが怪獣です。
もっとも、もっと怖かったのは人間のほう。極限状況のでの人間、それは明日の自分たちの姿かもしれないってトコでしょう。人が爆散した後の灰とか。川を流れる無数の死体とか。そして、無垢なるが故に狂気を体現する少女とか。
職人スピルバーグの、力量をあますことなくぶちこんだ正しい見せ物(スペクタクル)としての映画。ハドソン川からドバーっとあらわれるトライポッドだけで、ご飯10杯はいけます。残念ながら本編をスチールでしか見たことなくて(動いている画像は押井守うる星やつら」でのパロディでしか見たことがなかったんだけど(^^;;;)人々を蹂躙していくトライポッドの群れもご馳走、ご馳走。怪獣映画ファンならこれで燃えなきゃウソでしょう。

宇宙戦争という邦題をスピルバーグが知っているはずもないんだけど、こりゃまさしく、宇宙からの来訪者との戦争映画なんですな。スター・ウォーズエピソード3があれほど豪華に物量を投下して「戦争」をぶちこんだにも関わらず、去勢された「戦争映画」となっているのと対照的に…。

まったく作りとしてはエンターテインメントなんだけど、ボディブローみたい重い衝撃が後から効いてくる。

ええ、戦争は本当に怖ろしいです。私たち個人はまったくの無力で、一方的に絶対的な暴力に翻弄され、虐殺(ころ)される存在にすぎないし。その中で生き残るために、狂気に染まっていく哀れな存在にすぎない。

数多の反戦映画で「戦争は酷いです。」とテーマを声高に唱えるよりも、あのトライボッドの絶望を体現する雄叫びを聞くほうが、火に包まれながら暴走する列車を見るほうが、生々しくそれを感じさせてくれる。

極限状況に追い込まれた人間たちの有様はの描写は、まるでイスラエル建国前のアラブになだれ込んだユダヤ難民や、ベトナム戦争の終わりに本国に帰還するヘリにしがみつことする人々のニュース画像そのまんま。そういう人間の怖さがてんこ盛りなので、これはH・G・ウェルズじゃなくて「トリフィドの日」なんじゃないだろか…。

ラストについては、H・G・ウェルズのオチをもう少し上手くアレンジしてよかったかも、とは思うんだけど…。「ラストなんて飾りです、エライ人にはわからんのですよ、映画」ってところでどうでしょう?それと家族の再会は都合よすぎるので、すべてレイの罪悪感が見せる幻想の救いって解釈してもよいような。

ふと気づくと、SWのほうは褒めている人が多くて、宇宙戦争のほうはけちょんけちょん。ネクサスは打ち切りになるし、通っていたレストランはなくなるし、たれぱんだのグッズは手に入らなくなるし。そういう宿命なんだね、きっと。ヲイラ(拗)