レオナルド・ダ・ヴィンチ

CNNを見ていたら、もう、「ダ・ヴィンチ・コード」の話ばっかりだった。レポーターの人が、「ボイコット運動こそ、製作者側がやってほしいことなのです。」と言っていたのが、印象的だった。いや、これだけ話題になれば、映画は勝ったも同然。内容云々はともかく、商業的な成功間違いなしだもの。
ただ、原作読んでかなりげんなりきてしまったので、どうにもこうにも。私はこういう伝奇モノは大好きなんで、物語の作りと謎とその証明のやり方がちーとも面白くないなぁ、と。
ということで、「ダ・ヴィンチ・コード」の100倍くらい面白いと思う極私的おすすめを。

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絵画の象徴学というならば、せめてこの本の持つくらいの分析がほしいもの。(学者さんの文章なんで、少々生硬で、ダ・ヴィンチ・コードの5倍くらい読みづらいのが難点だけど。)
西洋絵画のもつ象徴性は、画面の端に描かれた一輪の薔薇にも込められているわけで。
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画についても、その深い象徴性について、かなりのページが割かれている。そういう深い絵を描く人々が絵に謎を込めるなら、分かり易いことをするはずがない。

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レオナルド・ダ・ヴィンチは、技術者だ。彼は絵画によって有名になったけれど、彼自身のまなざしはあくまでも「技術」へと注がれていたように思う。天上の救いよりも現世の改革こそ、彼の求めるものであったような。
男色の罪で、異端にされかかった彼ではあるけれど、キリスト教の現世的な影響はともかくも、千年前の創始者が結婚してようとそうでなかろうと、気にしたりしなかったんじゃあないかなあ。
それよりも、当時の大問題であった、アルノ川の治水と、フィレンツェを国際貿易都市として繁栄させることに関与したかもしれない、ってほうが、謎としてとってもしっくりくる。
あんな2時間ドラマみたいなミステリよか絶対、この本のほうが血湧き肉躍りますぜ。←ちょっと対象者限定のような気もしないでもない。