ジュリアス・シーザー

ジュリアス・シーザージュリアス・シーザー
スチュアート・ハージ チャールトン・ヘストン クリストファー・リー

コロムビアミュージックエンタテインメント 1986-02-21
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シェークスピア悲劇を元にした映画。なので、映画としてはかなり台詞が舞台調だ。元になった戯曲のほうは未読だが、あまりはずれたものにはしていないだろうと推測される。
題名こそ「ジュリアス・シーザー」だが、この話の主人公はブルータスだ。尊敬し敬愛もしてきた師匠とも言える相手はいかに殺すことを考えるようになるか、という、彼の心の動きが主題だ。
まじめな人間ほど、一旦猜疑に取り憑かれると、極端な行動に走る。そして、自分の心の深部の欲望を公衆からの要請とすりかえる。共和制の敵、シーザーを許しておけぬ、と。…うーん、どっかで見た構図だな、と思ったら、「国盗り物語」などで織田信長を討つ明智光秀の心理だ。司馬遼太郎シェークスピアに上手に採り入れた可能性もあるかも、と思わせる。
「自ら天下を取ろう」という野望を正当化できない、もしくは向かいあうことができないために、やっていることが後手後手に回る。そして、結局のところ彼の愛した「大衆」からは人気を得ることができない。なんとも哀れな最期。でも、それって本当にありがちなことなんだよな…。
チャールトン・ヘストンの嫌味極まるアントニウス演技は見事。ほめ殺し演説で、すっかり人気取りを果たして、この世の春を謳歌する。これからオクタヴィアヌスによって倒されるのはわかっているので、いいですけどね。