ルートヴィヒ ― 神々の黄昏
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派手な奇行と謎の死とで、「狂王」「月の王」と呼ばれるルートヴィヒ2世だが…。まあ、見ているとそんなにカッコイイものじゃない。ある意味、彼こそ「オタク」の祖。
オタクに生まれたならば国庫をカラにしても、自分好みの城を建て、そこに好きなだけフィギュアだのガンプラだのを置いて、好みのクリエイターを招き、やりたい放題やってみたいもの。なにしろノイッシュバンシュタイン城の地下にはニーベンルンゲンの指輪を再現するために人工の湖まで作ったのだから。しかし、その白鳥の船に乗って登場するルートヴィヒは、滑稽以外のなにものでもない。その周りに集まるのも、かの大ワーグナーを初めとして王の奇行を利用しようとする「ろくでなし」ばかり。
傾城とは美女のことを表す言葉だが、趣味に生きて統治能力のないオタクが支配者になってしまえば、そりゃ国も傾くというもの。もちろん、彼の浪費のみが国家を傾けたのではないようだが…。それでも支配者として、せめて形だけでも他国の姫を迎え入れていれば…道は変わっていたかもしれない
つくづく、オタクを統治者にしちゃーいけないねえ、と。周りももちろん気の毒だが、本人もやりたい放題やりながらも、必ずしも幸せそうじゃないし。
ただし、歴史とは皮肉なものだ。彼のオタク趣味満載のノイッシュバンシュタイン城はいまやドイツ観光の目玉となり、国の隆盛に貢献しているのである。実のところ、戦争やってるバカよりは、ルートヴィヒは狂ってなかったのかもしれない。