脳はなにかと言い訳する

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
池谷 裕二

祥伝社 2006-09
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脳科学の研究者が一般向けに書いたエッセイ。なにしろ人間「脳」のアドバンテージだけによって今の文明築いているので。生活から社会まで、この「脳」が不完全だからこそ問題が起こるようなモン。興味はつきない。
この本によれば、人間の脳は、外界からの刺激をある意味取捨選択している、つまり見たいこと、見ることが重要なことしか見ようとしない。後はスルー。もちろん、そうしなければ効率的に処理できないからだけど。
カエサルが言ったとされる「人間は、自分が見たいと思う現実しか見ない」という言葉も、人類の「脳」がそういう風にできているから仕方がない、というか、そういう性向があるからこそ、見たくない現実をなるべく客観的に認めていくようにしなければ、ってところかも。
初出がVISAの広報誌などで、肩の凝らないトリビアっぽい話が多く、もう少し突っ込んだ話が聞きたいと思うところはあるものの。非常にわかりやすく、しかも誤解や曲解を可能な限り避けようとしている意図はくみ取れて、よく出来ている。もちろん、いささか強引な願望や予測に基づいている記述はあるものの。
面白いのは、人間の海馬は過剰なストレスによっては劣化するものの、適度なストレスを与えられることでストレスに強くなる、という記述。つまりストレスをあまりに避けていては、ストレスへの耐性もつかない、ってコトでしょう。スポイルされた子供がストレスに弱いのはそのためなのかもしれない。
また脳は「身体」からのフィードバックによってその性質を決めている、ことを強調している点も面白い。
SFによくある現在の人間とは異なる身体を持ってしまったら、それによって脳も変化し、今現在の我々とはまったく別の思考をすることになるんだろうなぁ。