奇想の系譜 奇想の図譜
奇想の系譜 辻 惟雄 筑摩書房 2004-09-09 by G-Tools |
奇想の図譜 辻 惟雄 筑摩書房 2005-04 by G-Tools |
歌麿、北斎など海外で評価の高い浮世絵以外ほとんど認められなかった時代に、若冲など異端とも言われる日本近世画家たちのあふれるバイタリズムの紹介、というのは権威主義のはびこる中ではリスキーなこと。それに30年前から着手していたとのだからおそれいる。
そして近年のブームの中で、もともは高価な豪華本だったものを、誰の手にも入るようにと文庫化されたらしい。だから残念ながら絵のほうはモノクロ。豪華本のほうも欲しくなるから困ったもんだ。
俗世に生き、奇行に生きた、絵師たちのウソかマコトかの乱行ぶり。江戸の風俗をバックグラウンドにしたダイナミズム。語り口の上手さにのせられて、小さな文庫本の図ではなくホンモノが見たくなる。でも、本物のほうは世界に散らばっているんだよな(^^;;;
それにしても、現在のマンガやアニメーションに表現の遺伝子がここにある、と改めて感じさせられました。江戸文化畏るべし。
文庫本のあとがきにある以下の言葉ほど、端的にセンスオブワンダーを言い表すものを、他に私は知らない。
美術作品にひそかに望むのは、意表をつかれたときの驚きである。眠っている感性と想像力が一瞬目覚められさせ、日常性から解き放たれたときの喜びである。