化学の結婚

化学の結婚―付・薔薇十字基本文書化学の結婚―付・薔薇十字基本文書
ヨハン・V. アンドレーエ Johann Valentin Andreae 種村 季弘

紀伊國屋書店 2002-12
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化学の結婚」なんぞという題名ですがケミストリーではなくアルケミー(錬金術)の本です。化学が錬金術を出発点しているので、元素名程度はでてくるんだけど。すべて錬金術関連の暗喩がばらまかれた謎小説。王と王女の結婚が何を意味するのか、あらゆる解釈を産みそうな。
でてくる処女(?)がいやに艶めかしいのは、訳者の趣味かも(笑)
一応の解説はあるものの、その意味するところをすべてを理解するのは無理なので。種村さんの流麗な翻訳を楽しみつつ、中世の謎に幻惑されるのが一興というもの。解説にあるが如く万人にお勧めではないけれど、この手のモンが好きな人にはたまらない香気のある不可思議な世界。
それにしても、錬金術はちゃんとした体系だった世界観であり、ある意味キリスト教アンチだ。ここを通らなければ「宗教」の呪縛を解いて、「近代科学」への道を歩むことはできなかったわけでしょな。