ルパン
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もっとも、私も、モーリス・ルブランの小説のほうは、小学生の頃に「怪盗アルセーヌ・ルパン」を読んだくらいのもの。小学生が読むには少し早すぎる描写はさっさと省かれているので、ルパンがこんなに女好きとは知らなんだ。孫のほうの女好きは有名だけどさ。まあ、フランス人なので、そこんところはデフォルトかも。
優雅で紳士なダークヒーローなアルセーヌ・ルパンしか知らないので、毎度のことながら、こんなルパンはイヤだ〜と叫びたくなるお間抜けな若造。しかも、妖艶と謎の女、峰不二子じゃなくてカリオストロ伯爵夫人、ジョセフィーヌに翻弄される様は、かな〜り情けない。
まあ、こいつのコトは放っておいて、美しきジョセフィーヌ様クリスティン・スコット・トーマスを愛でるのが、この映画の真の楽しみ方。一方、エヴァ・グリーンのクラリスは喪服姿がよいですな。
話自体は、どいつもこいつもルパンの敵で、その中で謎解きありーの、あんまり出来のよくないアクションありーの、で、てんこ盛りなので、途中でかなりだれてしまう部分がないわけじゃない。フランス映画なので、ハリウッドと文法が違い、こっちが慣れていないということろもあるんだけど。でも、ルパンのアクションが下手くそなマーシャルアーツってのはどうよ?
ただ、ラスト、ジョセフィーヌがルパンの息子を操って、フランツ・ヨーゼフの暗殺テロをさせようとする、というのはなかなか。カリオストロ→フリーメーソン→第一次世界大戦の引き金の陰謀説という連想で、歴史好きをにやりとさせる。劇中ルパンによって阻止される暗殺未遂は、やがて、サラエボでの彼の息子のフェルディナンド大公夫妻の暗殺(サラエボ事件)で、その目的を遂げる、ということに。(ここに連想がいかないと、このラストは「なんのこっちゃ」になるわけだけど…。)歴史の影において、百年を生きる美女カリオストロ伯爵夫人の哄笑で終わる、というわけ(哄笑のシーンが実際にあるわけじゃないけれど)。ルパンなんぞ、ただの小物の怪盗よっ、と三代に渡って翻弄する悪女。お素敵!
美術面に関しては、ルパンが盗みまくる宝石はカルチェの提携で豪華な本物だし、世界遺産のヴェズレーのサント・マドレーヌ大聖堂まででてくるし、さすが本家本元での映画化なのでお金かかってんなあ。これでもう少し主人公がいい男だったら…。
私は、スターチャンネルで観たので吹き替えしか観ていないが、なんとジョセフィーヌには、増山江威子@峰不二子で、クラリスは島本須美@クラリス…。完全に狙ったキャスティングなんだそうだ。ちょっと吹き替え版が見てみたいかも。