食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む

食べる西洋美術史  「最後の晩餐」から読む食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む
宮下 規久朗

光文社 2007-01-17
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何故かダ・ヴィンチネタが続きます。
といっても、こちらは、一応「最後の晩餐」が最初の題材にはなっているものの、ルネサンス期に限らず、ダ・ヴィンチからアンディ・ウォーホルまで、繰り返される「食べ物」の意味を追って、西洋美術史に散見される「食事」モチーフの意味を説いていくいたってまじめな本。知的エンタテインメントとして非常に面白く、分量もそれほど多くないので、さらっと読むのにおすすめ。
そういえば、西洋絵画には「食べるシーン」なり「食べ物」なりが出てくることが多い。「大食」は七つの大罪の一つであるにも関わらず。というか、「七つの大罪」だからこそ、それを戒めるという錦の御旗の隠れ蓑にして、コレ食べたい、アレ食べたいとばかりに、自らの欲望の発露のまま描いたんだろうなぁ。それは、キリストの受難や殉教者の絵にどんな創作の世界も、密やかなサディズムマゾヒズムが埋め込まれているのと同様に。
西洋絵画、特に宗教画の歴史は宗教的「制約」とその「制約」のウラをいかにかくか、表だっては破れないタブーをいかに埋め込むかという闘争、と見える。いや、もちろん、そういった宗教的法悦の発露の場合もあるんだろうけど。芸術というものは、それだけじゃ済まないややこしさを含むものである、と思うので。
あとがきによれば著者ご本人も、相当な食道楽で。しかし近年身体を壊して節制生活とか…。食と美術との関わりのさらなる探求のためにも、ご健康の回復を祈る。