アレクサンドロスの征服と神話

アレクサンドロスの征服と神話アレクサンドロスの征服と神話
森谷 公俊

講談社 2007-01-18
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「ゴルディアスの結び目」などの数々の伝説に彩られたギリシャの英雄アレキサンダー大王の生涯、その神話と史実との狭間にあるヘレニズムの実像にせまる良書。
この本は西洋からのみの歴史認識の再検討といった感じで、我々の知る古代史がいかに西洋のバイアスでもって書かれているか、ということを痛切に感じさせてくれる。世界史で学んだヘレニズム文化=西洋文明とアジア文明の混淆の図式は単純すぎるとか。ギリシャの影響や感化と思いこんでいるのは間違いだとか…
また、結果的には、アレキサンダーの後継将軍たちが大王の神格化の一翼を担ったなどという見方など、非常に興味深い。卑近な例だが、本邦の「織田信長」という人が、政治秩序を作った「秀吉」や「家康」の主君であったがために、その生涯がクローズアップされ戦国史一の英雄となりえた、ということとよく似ているのかもしれない。(もちろん、そのスケールについては比べようもないわけだけれど…)
この講談社「興亡の世界史」シリーズの第二回配本。このシリーズ、講談社の40周年記念事業とかで、力入ってます。この本ばかりでなく非常に興味深い内容が並んいる。
9.11事件、アフガニスタン戦争、イラク戦争を経た世界は、歴史の見方すら変化させている。その影響は色濃くこのシリーズ全体にも見える。