ハイビジョン特集 ハプスブルク帝国 第1回「双頭の鷲(わし)の下に」

三回シリーズの第一回。
ハプスブルグ帝国の祖とも言うべき、マクシミリアン1世に焦点を置いての歴史ドキュメンタリー。日の沈まない王国はこうやってつくられたってお話。
めぼしいフィクションがないためか、残念ながら日本での知名度はイマイチのマクシミリアン1世。「中世最後の騎士」という通り名。ブルゴーニュのマリアとの結婚などなど、面白いエピソードに満ち溢れているんだけどなぁ。それをまる2時間使っての彼の足跡を追うとは、なかなかに嬉しい。
片田舎の領主に過ぎなかった彼が、いかにハプスブルグの名を馳せ、その一族を世界帝国の覇者としたか。
まあ、肥沃なブルゴンド王国との婚姻などかなりの幸運には恵まれたものの、それを活かしたのは彼自身の才覚。中世のうす闇にいた中央ヨーロッパに先進国の文明の光を採り入れつつ、領土拡大に先進し。そのなかにも芸術・産業の保護にも余念がない。

もう、10年以上前に、チロルのインスブルックでマクシミリアン1世の3つの肖像画に出会った。ブルゴーニュのマリアと婚姻したばかりの溌剌としたもの、皇帝として閲兵している落ち着きに満ちた姿、そして臨終の床…。堂々とした体躯。肖像画を通して伝わってくるその魅力。英明さ。そして、王としての現実主義。そして自らの死すら、客体化して残そうとした胆力。なかなかいるもんじゃありませんぜ、こんなかっこいいお人。ウィーンがマリア・テレジアとフランツ・ヨーゼフの都とすれば、インスブルックは、中世の終わりを彗星の如く駆け抜けたマクシミリアンの場所。
(あー、でも、借金が貯まった挙げ句宿の主人から滞在を断られて、泣く泣くインスブルックを追い出されたという哀しいエピソードが紹介されてましたが…。)
彼の息子のフィリップ美公が、「狂女ファナ」の旦那さんですな。
それにしても有名な「幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ」という言葉はマクシミリアンのだと記憶していたんだけど。ドキュメンタリーの中ではそうは言ってなかったなぁ。ま、どっちでもいいや、とにかく「婚姻」によって、世界帝国を作りだしたのは、「彼」だったんだから。(もっとも戦争も好きだったらしいけど。)