空の中

未知の知能ある生命体とのファーストコンタクト。
空の中、透明な唯一にして全なる生物がいた。それが人間たちと接触してしまうまでは…。

空の中空の中
有川 浩

メディアワークス 2004-10-30
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透明の未知生命体との接触事故で、たったひとりの父親を亡くした少年。彼が見つけたのは、その未知生命体の断片。
少年はなにも知らず、その未知の生命体を育てはじめる。「フェイク」と名付けて…。
一方、生命体と接触した自衛官たちは、その生命体を【白鯨】と名付け、高度な知性体である彼と交渉をはじめる。

ってことで、一種の怪獣映画の伝統をとりいれつつ、少年と少女の幼い心の思い、少年が育てたけなげな怪物モノ、おまけにトレンディドラマ(古っ)調のラブコメまでいれてのてんこ盛りの小説。
「図書館」シリーズでもそうだけど、甘い甘いラブコメ入りなのが、有川浩の身上なんで。そこらへんは、「うわーこっ恥づかしい〜」と赤面しながら叫びつつガマンして読むしかない。
ま、背骨のところには結構しっかりとしたサイエンス・スペキュレーションが入っているし、フェイクと名付けられた異性物の少年への哀しい従順に涙するのは間違いないので。
一読、すぐに思い浮かべるのは「ガメラ3」。著者も後書きでガメラシリーズの影響については、語っているので、その遺伝子がまざっちゃったのは間違いないでしょう。なにしろ、「私は「白鯨」を許さない!」って煽り文句にしてもなんの違和感ないもの。
つーか「ガメラ3」は破綻しちゃっているので、ちゃんと「空の中」のように、「大人」がきちんと責任を果たし、未熟な子供を導く話しだったらよかったのに。
「間違うことをごまかしたらいかんがよね。」土佐弁で語られる宮じいの言葉が沁みる。間違ってしまった事実はどうにもならない、その冷たく絶対の真理の前に。