ワールド・トレード・センター

ワールド・トレード・センター スペシャル・コレクターズ・エディション
ニコラス・ケイジ マイケル・ペーニャ マギー・ギレンホール
B000HXDHBE


9.11事件の際、崩壊したワールド・トレード・センターの下敷きになってしまった港湾警察の警察官たち。彼らの救出の際に繰り広げられる人々のドラマ。
閉じこめられた地下という重苦しくなるような閉鎖空間。お互いをなんとか励ましつつ生き延びようとする警察官たち。少ない情報の中、不安と喪失の恐怖に立ち向かう家族たち。そして、未曾有の事件の中、ひとりでも多くの人命を救おうとする人々。
巨大な「天災」に対して、無力ながらなんとか立ち向かおうとする人々の姿を、淡々とした描写ながら、活写している。
廃墟となる巨大ビル。真っ暗な地下世界。地獄さながらの世界、けれど、それが実際にあった世界だ。
9.11がどんな政治的意図を持った事件にしろ、それは俯瞰で見ることのできる外部の人間の言うこと。その中の人間たちにとっては、「災害」であり、なすすべのない恐怖であり、「なんでこんなことになったのか、全然わからねえよ!」という叫びそのままの理不尽だ。
これが巻き込まれたひとたちの本音だろうし。彼らの苦痛、苦悩、喪失は、想像にあまりあるのだが…。
ニコラス・ケイジも抑えた演技で、ヒーローではにない「普通の男」を演じてみせている。
それにしても、ニコラス・ケイジってカメレオンのようにいろんな面を見せてくれるなぁ。「ナショナル・トレジャー」や「ゴースト・ライダー」も彼なら、「ロード・オブ・ザ・ウォー」も「ウェザーマン」も、彼。違いすぎる。てゆーか、ヒーロー物が本当は似合わない人なんじゃあるまいか。
ユナイテッド93」とはまったく別アプローチ。そして、この映画も確かに良くできていると思う。
けれど、この話し、911を題材にとってなかったら、もっと素直に見られたかもしれない。特に繰り返し挿入される「キリスト教的」な救いのイメージが、異教徒にはどうしても気になってしまう。他の映画ならそれでも別に全然構わないけれど、この事件を題材にとってしまうと…。そこにどうしようもなく内向きの価値観を感じさせてしまうのだ