怖いこわい京都、教えます

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入江 敦彦

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昨年、紅葉の季節に奈良に観光に行ったとき、「石子詰め」供養寺の表示。後からネットで調べると、これが結構怖ろしい。
奈良公園の鹿は春日大社の神の使い。これを傷つけた稚児が石子詰めの極刑にされたという伝説があって、このお寺では死んだ稚児を祀っているそうです。石子詰めって、穴にいれて上から小石で埋めるという残酷極まりない死刑ですからねえ。
伝説といいつつ、こういったことは、長くまかり通っていた様子。
奈良では興福寺は暗然たる権力を握り、江戸時代くらいまで、司直の手を拒んでいたとか。とにもかくにも鹿が人間様よりもずっと大事にされていた伝統は、ほんのちょっと前まで奈良という街を支配していたようです。(いや、考えたくはないのですが、もしかしたら現在でも…。)
さらにネットの中をさすらうと、「昔の奈良の人は早起きだ」という風評があったなどという記述が。何故早起きかというと、家の前で鹿が死んでいたら隣家になすりつけるためだとか…そうじゃないとか(^^;;;;;;;。いや、ホントかどうか知りませんが。
古都の風雅で美しい風景は、淑やかにこういった怖ろしさを飲み込んでいる様子。これは奈良や京都に限らず、ウィーンだとかミラノでも感じたこと。
筆者は京都を一種の檻と表現していますが、おそらくは古都と呼ばれる歴史ある都市とは、そのような人々のネガティブな感情と縛りをきっちりと残しつつ、その美しくも壮麗な姿を保っているのでしょう。そりゃもう、桜(はな)が美しく咲き誇るためにその下に屍を埋められていなくちゃならないように。
ということで、千年王都「京都」にまつわる怖ろしい話しがユーモアたっぷりの筆致で綴られています。
なんだか眉にツバつけたくなるような演出過剰の話しがないわけじゃないけど。それにしても、どんな心霊スポットやら廃墟よりも、結局のところ怖ろしいのは人間の心の有り様、ってところはすごく納得がいきます。