ターミナル
故国(くに)を失い、パスポートが無効になり、アメリカに入国することも、帰ることもできなくなって、空港に文字通り立ち往生してしまう男の話。実話をもとに、とのことだけど、まずは現代のお伽噺だ。
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しかし、このお伽噺、一筋縄ではないかない。
これはアメリカにおいて英語がマザータングでないこと、マイノリティであることがいかに悲しいか、という映画だ。異国で言葉の通じなさの心細さを味わったことのある人間なら、ついつい、トム・ハンクス演じる主人公のビクターに感情移入してしまうだろう。パスポートすなわち自国の庇護が通用しないという一点で、完全にUnacceptableと拒否される。言葉が不自由であるというただ一点で、おうおうにしてその知性まで否定され、邪魔者扱いされる。「異国」とはそういう場所である。
その異国の縮図である空港で、やがて本当に逞しく暮らし始めるばかりか、現場で働く人簿との掴んでいくビクター。馬鹿正直で不器用な生き方しかできない彼が、その馬鹿正直故にビューロクラシーの塊のような空港職員のお偉方の裏をかいていく。
ありえない話だからこそ、この映画、悪くない、と思うんだけどねえ。