戦場のピアニスト

ユダヤ人排斥、そしてホロコーストの嵐の中、たったひとり逃げまどったポーランドユダヤ人ピアニスト、シュピルマン

戦場のピアニスト戦場のピアニスト
エイドリアン・ブロディ ウワディスワフ・シュピルマン ロマン・ポランスキー

アミューズソフトエンタテインメント 2003-08-22
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胸が苦しくなるような、戦争と、その残酷。ひ弱で無力で、生きることに不器用な芸術家シュピルマンが、家族もなにもかもを失い、ピアニストとしての彼の支持者からの庇護で生き残る。ニュース映像さながらに、ゲットーで繰り広げられる民族の悲劇。ドイツ人のユダヤ人への蛮行、その中で同じユダヤ人を売るユダヤ人。人間の醜さと愚かさと。ポランスキーはとにかく淡々と、第二次世界大戦ポーランドの惨い現実をつきつける。
シュピルマンは高名なピアニストだから生き残れたのではない。それに助けられた局面はあるにせよ、最終的には最後まで生きる力を失わなかったその強靱さのみで生き残る。おそらくひと思いに楽になることを思い、何度も試みたに違いないのに…。映像の中で、それは直接語られることはないが、彼のピアノへの執念が彼の強靱さの源だったのかもしれない。
最後はゲットー廃墟で排斥した側であるナチス将校の情けによって、生をつなぐシュピルマン。その運命の皮肉。戦争という大嵐の中で個人の力はあまりにも弱く、ただただ翻弄される木の葉にすぎない。同じく第二次世界大戦を歴史に翻弄されるままに生き残る「ラストエンペラー」のラストを思い起こさせる。傀儡皇帝もピアニストも、ナチスの一将校すらも、歴史のわだ闇の中、個人の「思い」とは別の生を生きることを強いられたのだ。