グッバイ、レーニン!

Fox Life HDで。DVD以上の高画質で見られるのだから、非常にありがたい。

グッバイ、レーニン!グッバイ、レーニン!
ダニエル・ブリュール ヴォルフガング・ベッカー カトリーン・サーズ

ビデオメーカー 2004-10-16
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東西ドイツ統一の頃、壁の崩壊も、その後の統一による社会の変化を知らず、心臓発作とその後の昏睡によって眠り続けた母。もう一度刺激を与えれば心臓発作で死ぬかもしれない彼女のために、息子はたった一部屋の幻の社会主義国家を作りあげる…。個人の力ではどうにもならぬ社会の変化、そこへの儚く悲しく滑稽な努力を、どたばたコメディ仕立てで描く人情話。
8ヶ月の昏睡から目覚めた彼女のために、すでに失われた東ドイツの食べ物を求め、古着屋でやぼったい服を探して家族や友人に着せ、ニュースを偽造し、主人公アレックスの奮闘は続く。ままならぬ仕事、あまり母親の世話に乗り気でない家族、そういった障害の中で、それでもひたむきに母親を「だます」ことに専心する彼。
社会の急速な変化で、人々の考え方も、生活様式も変わっていく…。母のためにといいつつ、本当はその社会の変化に取り残されフラストレーションを感じているのはアレックスのほうなのである。だから、母が夢見た理想の社会主義国家の残滓を再現することに、ここまで執着する。
そして、アレックスが居眠りをした間に、外に迷い出てしまう母。様々な変革を目にし、彼女の目の前で、ヘリコプターで釣り下げられたレーニン像が空を飛ぶシーンは、美しくて悲しくて、悲しくて滑稽だ。
映画の描写ではぼやかされているものの、アレックスの妻により真実を知らされたであろう母が、息子の作った社会主義が勝利を得て東西ドイツ分裂が終わる幻のニュースフィルムを「すばらしいわ」と涙を流す。息子の愚かな行動と、そうせねばならなかった愛情とを、赦して。
大きな変革の前で、翻弄されるしかない人々。悲劇と喜劇とのメビウスリング。