鬼切り夜鳥子 ~百鬼夜行学園

鬼切り夜鳥子 ~百鬼夜行学園~鬼切り夜鳥子 ~百鬼夜行学園~
桝田 省治 佐嶋 真実

エンターブレイン 2006-06-30
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天外魔境II」とか、「俺の屍を越えていけ」で有名なゲームデザイナー桝田省治初の伝奇小説。全身に式神の刺青を纏ってしまった幼なじみを助けるべく高校生の奮闘ってことで、
正直なところ、ライトノベルにありがちな設定、ありがちな展開。特に、1話2話はなんとなく今夏公開された「時をかける少女」がなんとなく頭に浮かんだりして。
でも、そこは徐々に桝田節が全開に。
会話の妙とキャラ立ての旨さはゲームと同様。間に入るコメディ部分もさすが。
優秀そうに見えて、そこは高校生でそれぞれに「未熟」を抱える主人公たち三人の微妙な揺れ方もよいし。その青い正義感になんとなく影響されてしまった「異形」の鬼狩り「夜鳥子」も面白い。
また、駒子に刻まれた刺青から立ち現れる式神たちも、それぞれにおどろおどろしく、魅力的。おまけにそれが現在は式として下してはあるものの、いつ敵となるか分からぬという緊張感も孕んでいる。
毎回、駒子が走るシーンから導入という縛りも、小説のテンポをぐんぐん進めることに役立っている。もちろん、まだまだこなれた印象はなくて、戦闘シーンの様子が文章だけで伝わりにくいなどの欠点はあるけれど、それはやはり今後ということで。
古事記のようなややもすれば高尚なブンガクの匂いが立つモノに、思いっきり猥雑なもの、グロテスクなものを加えて、エンターテインメントに仕上げる、という手法は、相変わらず健在のよう。
とはいえ、読後感の爽やかさは保証します。
それと「俺の屍を越えていけ」にどうも世界観が繋がる様子があり。