大奥(2)

大奥 2 (2)大奥 2 (2)
よしなが ふみ

白泉社 2006-11-29
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若い男性ばかりが死んでいく疫病によって、男性が激減した世界でのもう一つの歴史…。江戸300年に冠たるハーレム、「大奥」がもしも男性だけの世界だったら?という歴史ifSF。
ジェンダーの交換のifということで、第一巻でもテーマ自体は重かったが、それでも「男ハーレム描きたい〜」という動機(笑)がちらついていたような気がするし、一流のギャグも混じっていたんだが…。第二巻では何故そのような男性だけのハーレムが成立しえたのか、という社会状況を描き始めたもんだから、話はとにかくシリアスに。そこに犠牲になった人々、踏みにじられた幸福の物語は暗く惨い。それは、早逝した父親の身代わりとして連れてこられた少女と、聖人となるべき道を狂わされた公家出身の元僧侶の、「恋」の話に集約していく。
「太平の世」という安定な社会システムを守るためにはどんな犠牲も厭わない春日の局の狂気と妄執の迫力。「徳川のために、今ここで死ね」と息子に言い放つところなんざ鳥肌モンである。もちろん、彼女の歪みがそのまま大奥の歪みとなり、周囲に不幸をまき散らしているわけだが…。
その全てを飲み込んで男性ばかりの「大奥」というシステムは確立し、8代吉宗の物語に繋がるのだろう。第一巻の時にも思ったが、「史実」をちゃんと丹念に押さえつつ、とんでもない話を挿入していく手腕が素晴らしい。しかもこれだけ厳しい人間観察が伴った深くてシリアスな話ができるのだから、すごいとしかいいようがない。
のだめカンタービレ」「ハチミツとクローバー」そして、よしながふみの作品群と、「少女マンガ」の物語クオリティは凄まじいところにいってる気がする。