チェーザレ 破壊の創造者

「ボルジアの毒」で悪名高きかのチェーザレ・ボルジアの一代記。といっても今までの歴史の悪役としてのチェーザレではなく、若く瑞々しい野心家の一生といった趣。澁澤の描くところの歪んだボルジアでないものも、たまにはよいです。

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和訳されていないイタリア語でのチェザーレの評伝が原作ということだけど、それだけでなく当時の衣装や風俗、果ては食卓に並ぶ料理まで、歴史背景のいろんなものをよく調べてあるなあ、と感心。しかも、それが「言葉」だけでなく精密な「背景画」に一番でていて、イタリアの古い都市の精密な闇といったものまで、顕しているのはすごい。
また、ダ・ヴィンチサヴォナローラをはじめとして、ルネサンスの千両役者たちがキラ星の如く次々に登場してきて、やっぱイタリアはこの時代が面白い。
歴史漫画としては、すごいところに到達していると思う。もっとも、美しすぎる背景画のほうが主役となって、人物の動きや表情が、一辺倒なきらいはあって、それが「漫画」としてはどうかな、という場面もないわけではない。
とりあえず「華麗なる残酷」ではないチェーザレ・ボルジアを楽しみに読み続けるつもり。