未来への贈りもの- 中国泰山石経と浄土教美術展

私には珍しく抽選にあたって、国立博物館の企画展の券をいただいたので、また、太宰府まで足を運びました。あいにくの雨、だけど博物館に行くには悪くない天候。人が少ないから。
降りしきる雨の中、新緑に囲まれた博物館はまた別の風情がありました。

今回は、未来への贈りものと題して、仏教美術が中心の展覧会。

館内に入ってまず目を引くのは、高い天井を利用した巨大拓本。長さ35mとか。そこに経典の大きな字が…。
中国の泰山というと孫悟空が下敷きになった山←そんなことしか知らないのってまずくね?(^^;;;。)
慌ててネットで泰山を調べると、道教の聖地なのだそう。また仏教、儒教もともにここを修行場としていた様子。仏教が隆盛なころ、その泰山の岩肌をキャンパスとして、巨大経典が刻まれていたとのこと。
その巨大な経典を拓本(表面を紙の上から墨によって叩くことで写したもの)したものがコレ。写真では伝わりにくいものの、博物館の高い天井から吊された拓本のその大きさに圧倒されます。

後は各所から集められた仏像、仏教画。
そのなかでも私が魅せられるのは、どうしても修羅の像であり、地獄の絵巻。炎の中で踊る鬼たちの、凄惨。末法思想の華やかななりし時代の、地獄の思想。
洋の東西を問わず、人のイマジネーションは、地獄を語るときにこそ生き生きとするような…。

空也聖人像というのは一体だけじゃなかったんですね。教科書にのっている六波羅密寺のものしか知らなかった。唱える念仏が6体の仏となる、という印象的な像です。六波羅密寺のものよりも年齢がいった様子がリアル。

最後にウケたのが、この秒数時計。56億7千万年後の弥勒降臨までの時間だそう。なんと秒数になおすと京の単位までになる。
その頃、太陽は巨星化の道を辿り、地球は飲み込まれちゃっているだろうなぁ。もうちょっと早めに救いに現れていただけると助かるんだけど。

全体としては、展覧会の印象は少し地味。私のような寺巡りが好きな人間じゃないとちょっと薦めにくいかもしれない。この1枚、という突出した作品がなかったのが、ちょっと残念かも。
とはいえ、雨の日の休日に、ひそやかに心穏やかな気分になるのにはよかったです。

なお、画像の一部は九州国立博物館からお借りしました。