フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展(国立新美術館)その3

さて、肝腎のフェルメール展の感想を。
フェルメールは「牛乳を注ぐ女」一枚なので、同時代とおぼしきオランダ風俗画がいっしょに展示されている。
宗教色が非常に強いイタリア絵画などと比較して、「生活」そのものを題材とした風俗画はいろんな寓意も含んでいるとはいえ、漫画的な楽しさがあって、これはこれで面白い。まあ、中には、ソレ描いて楽しいのか?と思わせるような内容のものもあったりするけど(笑)
それにしても、周囲やモノには偏執的にリアルな素材感を出しているのに、人物だけが何故かおざなりだったりして…。写真のない時代に、いかにリアル感を演出するのかが画家の腕とされたのかもしれないなぁ。
目玉のフェルメールは、そういったリアルな質感と、それだけにとどまらぬ空気感といったものが素晴らしい。
フェルメールの画を見ていると、キャンバス地に絵の具を塗ったものに何故美を感じるか?ということを問い直される気がする。
手をのばせばその重ささえ感じるのではないかと思わせるパン、一筋となってしたたり落ちるミルク。働くことの威厳に満ちた、言い換えれば美しいだけの女ではない人の一瞬を切り取った画。
鮮やかでありながら、光を充分に意識した落ち着いた色彩。そして、簡素でかつ奥行きを感じさせるバック。
外国の巨大美術館でゆったりと見るのもいいけれど、十全にライトを計算尽くして、最高の状態での絵を愉しむことができる日本の企画展もまた別の趣がある。まあ、平日じゃないと人の頭だけを見るハメになりかねないケドね。