怖いこわい京都、教えます

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入江 敦彦

京都人だけが知っている 京都な暮らし (幻冬舎文庫 い 29-1) イケズの構造 (新潮文庫 い 89-1) 京味深々 京都人だけが食べている2 (知恵の森文庫) 奇想遺産―世界のふしぎ建築物語

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昨年、紅葉の季節に奈良に観光に行ったとき、「石子詰め」供養寺の表示。後からネットで調べると、これが結構怖ろしい。
奈良公園の鹿は春日大社の神の使い。これを傷つけた稚児が石子詰めの極刑にされたという伝説があって、このお寺では死んだ稚児を祀っているそうです。石子詰めって、穴にいれて上から小石で埋めるという残酷極まりない死刑ですからねえ。
伝説といいつつ、こういったことは、長くまかり通っていた様子。
奈良では興福寺は暗然たる権力を握り、江戸時代くらいまで、司直の手を拒んでいたとか。とにもかくにも鹿が人間様よりもずっと大事にされていた伝統は、ほんのちょっと前まで奈良という街を支配していたようです。(いや、考えたくはないのですが、もしかしたら現在でも…。)
さらにネットの中をさすらうと、「昔の奈良の人は早起きだ」という風評があったなどという記述が。何故早起きかというと、家の前で鹿が死んでいたら隣家になすりつけるためだとか…そうじゃないとか(^^;;;;;;;。いや、ホントかどうか知りませんが。
古都の風雅で美しい風景は、淑やかにこういった怖ろしさを飲み込んでいる様子。これは奈良や京都に限らず、ウィーンだとかミラノでも感じたこと。
筆者は京都を一種の檻と表現していますが、おそらくは古都と呼ばれる歴史ある都市とは、そのような人々のネガティブな感情と縛りをきっちりと残しつつ、その美しくも壮麗な姿を保っているのでしょう。そりゃもう、桜(はな)が美しく咲き誇るためにその下に屍を埋められていなくちゃならないように。
ということで、千年王都「京都」にまつわる怖ろしい話しがユーモアたっぷりの筆致で綴られています。
なんだか眉にツバつけたくなるような演出過剰の話しがないわけじゃないけど。それにしても、どんな心霊スポットやら廃墟よりも、結局のところ怖ろしいのは人間の心の有り様、ってところはすごく納得がいきます。

海の底

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有川 浩

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ある日、日本が謎の人間を喰らう甲殻類に襲われはじめ、対応に追われる政府、警察。
その中で、自衛隊祭に遊びに来ていた子供たちをかかえたまま、海の中に孤立してしまった潜水艦。彼らの運命は…。
「空の中」と同様に、自衛隊員を主人公としたお話。といっても話しは完全に独立している。
「空の中」が「ガメラ3」であるとすれば、こちらは「ガメラ2」か。レギオンの如き、等身大クラスの集団甲殻類の襲撃だ。しかもこいつらはレギオンと同じく人を喰う。
そんな脅威の前であってもすんなりとは出動できない自衛隊。無策な政府、後手後手に回らざるをえない人々。と、リアルな社会描写。
一方、潜水艦という狭い空間の中に取り残された子供たちにも一筋縄ではいかない問題がいろいろと。
若き二人の自衛官は、ふりまわされつつも。彼らの真剣さと誠実はやがて子供たちをゆさぶり…。
後の、図書館シリーズとキャラシフトが同じという面はあるものの。今回も責任感がちゃんとある大人が子供たちの未熟に向き合う話し。うん、その点ではちゃんと「空の中」の続編なのかもしれない。
あ、今回もラブコメはありですw。というか、キャラシフト、およびラブコメの方向性が後の図書館シリーズを彷彿とさせる。